韓国の尹錫悦大統領(写真:ロイター/アフロ)

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が、公営放送KBS(韓国放送公社)の受信料徴収方法を変更する施行令を決定した。これによって、これまで電気料金と一緒に徴収されていた受信料が別途徴収に変わることになる。これに伴ってKBSの収入は「年間5000億ウォン(約550億円)以上減少する」とも言われ、KBSにとっては死活問題だ。

 野党と進歩勢力からは、「政権に批判的なKBSを手なずける狙いだ」という批判が出ているが、国民の間では「偏向報道を繰り返してきたKBSの自業自得」という評価が優勢だ。

必要性が叫ばれながら何度も頓挫した受信料徴収方式改革

 KBSは2つのテレビチャンネルと6つのラジオチャンネルのほか、子会社を通じてケーブルTV、衛星放送、IPTVなどを運営する韓国最大の放送局だ。公共放送で国民から受信料を徴収しつつ、民放と同様に広告料も受け取っている。

 資料によると、2022年、KBSは1兆5035億ウォンの収入のうち、受信料収入が6935億ウォンで45.3%を占め、広告収入は2601億ウォンで17.3%だった。

 KBSの受信料は毎月2500ウォン(日本円で約280円)で、韓国電力公社が1994年から電気料金とともに徴収する制度がとられてきた。すなわち、受信料を払わなければ電気料金未納として処理される強制徴収法だ。

 そうした徴収方法にしたのは、受信料未納を防止し、公営放送として公正で品格のある放送ができるよう安定的な財源を確保しようとの狙いからだった。