(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
韓国主要紙「中央日報」は15日、<【時視各角】「ピーク・コリア」危機>という記事を掲載した。2020年夏に未来統合党(国民の力の前身)非常対策委員長・金鍾仁(キム・ジョンイン)氏が「“ピーク・ジャパン”から衰退に向かい始めた日本を反面教師にしよう」と呼びかけたことを引き合いに出しつつ、「今日本は経済が好転しつつあり、むしろ韓国は改革が遅れ『ピーク・コリア』だ」という危機を訴えたものである。
国民の間には「日本を超えた」との実感なし
同じく中央日報は20日、スイス国際経営開発研究院(IMD)が64カ国を対象に実施した今年の国際競争力評価で韓国の順位が昨年より1段階下がり28位となったが、日本の35位よりも上位にある、と報じた。
2021年、日本経済研究センターが「2027年には韓国が名目GDPで日本を上回る」との予想を発表したときには、これが大きなニュースとなった。しかし世界銀行のデータによれば購買力平価(PPP)に基づく一人当たりGDPでは、すでに韓国は日本を追い越している。
韓国は成長の成果を労働者に与えてきた。1990年から2020年までの30年間、平均的な日本の労働者は年間実質賃金の上昇を享受しなかったが、韓国の労働者の賃金は2倍になり、現在韓国の労働者は日本の労働者よりも高い実質賃金を得ている。
サムスンやSKの半導体企業はその規模でも品質でも日本企業を追い越した。日本の製造業はアナログの時代には世界最高の水準であったが、デジタル時代になりその優位性は失われた。
今ソウルは東京よりも割高な都市になった。国際的な人材管理会社ECAインターナショナルが207都市の生活費を調査したところによると、ソウルは9位、東京は10位だった。
こうして見てみると、韓国はさまざまな面で日本を上回っているようにも思える。こうした話題は韓国人の自尊心を心地よくくすぐるだろうし、日本人にとっては納得できない思いがあるだろう。