韓国の放送局は労組が強い。写真は2017年10月23日にKBSとMBCの労組が不当労働行為などを訴え共同で行ったストライキ(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

 まさか本当にやるとは――韓国のメディア関係者の間で衝撃が広がった。これまで電気料金と一括徴収していた韓国の国営放送KBS(韓国放送公社)の受信料制度が約30年ぶりに変わることになった。

 経営に大打撃となるKBS経営陣や野党は「政権によるメディア掌握の動きだ」と猛反発しているが、政府与党は、もっと大きな放送界の改革をもくろんでいる。

 2023年7月11日、韓国政府は首相が出席して開いた国務会議(閣議に相当)で、KBS受信料の徴収方式を変更するために放送法施行令の改定を決議した。

 これまで電気料金と一括して韓国電力公社が徴収していた方式が終わることになる。尹錫悦(ユン・ソンニョル=1960年生)大統領が近く裁可する。

「電気料金と一緒に払っているという話をどこかで聞いたことはあったが・・・。KBSどころかテレビを見ないし、意識したこともなかった」

 ソウルの30代の会社員は、徴収方式変更という今回のニュースを見るまでKBSの受信料について考えたことすらなかった。

1994年から電気料金と一括徴収

 日本のNHKに相当する韓国のKBSにも受信料がある。テレビ受信機を持っている場合には、KBSを見ようが見まいが支払う必要がある。

 だが、日本とは決定的に異なる点がある。電気料金と一括で徴収している点だ。

 アパートなどに住んでいる場合、電気料金は管理費と一括して払う場合が多い。その明細書をよく見ると、TV受信料などの項目がある。これがKBS受信料だ。

 1か月の料金は2500ウォン(1円=9ウォン)。

 ずいぶん安いような気がするが、調べてみたら1981年にカラーテレビ放送が始まった時から受信料はそのままだ。

 電気料金との一括徴収だから、KBS受信料の徴収率は99.9%だという。電気代を支払う世帯から漏れなく徴収しているのだから、KBSからみれば、実に便利な制度だ。

 1994年に始まったこの制度に尹錫悦政権が終止符を打った。

 放送通信委員会が7月5日に放送法施行令の改正を決議し、11日に国務会議でも決議した。