韓国・清州市の地下車道には豪雨で決壊した川の水が一気に流れ込み、多くの車が水没。14人もの犠牲者を出す惨事となった(写真:AP/アフロ)

 異常気象による豪雨や高温が地球全体を襲っている。韓国でも今年の梅雨では「極限豪雨」という新たな気象用語が登場するほどの大雨が降り大きな被害が出た。死者・行方不明者はあわせて50人に上り、過去に記録した46人を12年ぶりに上回ってしまった。

 ところが、この国家的災害を前にしても与野党は政治論争に没頭、韓国民から非難の声が上がっている。

死者多数の豪雨被害は「人災」だった

 6月25日から7月26日まで続いた韓国の梅雨は、その日数こそ平年並みだったが、降水量は648.7ミリと、1973年に全国観測網が整備されて以降、過去3番目を記録した。中でも韓国の中央部に位置する忠清北道は平年の3倍以上の大雨に見舞われた。この忠清北道の清州市五松の地下車道では、川からあふれ出した大量の水があっという間に流れ込み、14人の死者が生じる大事故も起きた。日本でも大々的に報じられたのでご存じの方も多いだろう。

 異常気象による豪雨災害とはいえ、ここまで大きな被害が出たのは、当局の杜撰な対応に原因があった。これまで何度も指摘されてきた韓国の安全不感症と安全管理システムの問題点を改めて浮き彫りにした惨事だったと言える。

 被害を増大させた第一の原因は、近隣河川に急造されていた臨時堤防の杜撰工事だった。清州市は2018年、道路拡張工事を始めるにあたって五松を流れる美湖川の堤防を崩して以降、毎年6月になると雨量の増大に備えるための「臨時堤防」を積み、梅雨明け後の9~11月にこれを撤去することを繰り返してきた。今年も6月29日から7月7日にかけて臨時堤防を設置したが、実は今年の堤防の高さが例年より低くなっていた。

 そこを今回の豪雨が襲った。美湖川の水位は急上昇し、水圧に耐えられなくなった臨時堤防が崩壊、400メートル離れた地下車道にも川の水が一気に流入して、あの惨事が起きたのだ。