韓国のファーストレディ・金建希氏(写真:Penta Press/アフロ)

 金建希(キム・ゴンヒ)韓国大統領夫人の母親の崔殷淳(チェ・ウンソン)が私文書偽造などの疑いで懲役1年を宣告され法廷拘束された。強力な大統領制を敷く韓国で、大統領の親戚・縁者がその大統領任期序盤に拘束されるケースは珍しく、野党「共に民主党」はこれを機に金建希夫人と彼女の実家を巡る不正疑惑に対する攻勢をさらに強める構えだ。

大統領の義母が残高証明書を偽造?

 崔殷淳氏事件の概要は次の通りだ。

 2013年、崔氏は京畿道城南市の土地を購入する際に、同業者の安氏から依頼されて、銀行に347億ウォンを預け入れているとする残高証明書を偽造した。安氏は偽造された残高証明書を利用して3人から数十億ウォンを借り入れたが、その後も返済をしなかった。金を貸した被害者は安氏を詐欺罪で告訴したが、安氏は法廷で「自身は代理人に過ぎない」「借りた金は崔氏に全て渡した」と主張した。

 一方、崔氏は「金を受け取ってない」と安氏の証言を否認。その真偽は明らかになっていないが、検察は「崔氏に対する告訴がなされていない」という理由でこの時は捜査に乗り出さなかった。

 この状況が一変したのは、2019年の文在寅(ムン・ジェイン)政権下で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)検察総長が曺国(チョ・グク)元法務長官に対する捜査に乗り出してからだ。文政権が検察に対する影響力を強化すると、それまで崔氏の疑惑に手を着けなかった検察も、遅ればせながら捜査に着手。2020年3月崔氏を私文書偽造、不動産実名法違反などの疑いで起訴した。

 そして2021年12月、1審で懲役1年を宣告。さらに今年7月21日の控訴審で、懲役1年の刑とともに「罪質が悪く、逃走の恐れがある」という理由で法廷拘束までされたのだった。