歴代の韓国大統領が退任後に拘束や自殺など不幸な余生を送る場合が多いというジンクスはよく知られているが、そこには、大統領一家の親類縁者たちの不正疑惑が政権に致命的な打撃を与えたというジンクスも存在する。

尹錫悦氏も歴代大統領と同じ轍を踏むのか

 盧泰愚(ノ・テウ)大統領時代には大統領夫人のいとこが賄賂容疑で拘束されたことがあり、金泳三(キム・ヨンサム)大統領時代には当時政界で「小統領」として通っていた次男で学者の金賢哲(キム・ヒョンチョル)氏が脱税や収賄などの疑いで拘束される大事件があった。民主闘士だった金大中(キム・デジュン)大統領は任期中に3人の息子が全員斡旋収賄などの疑いで拘束収監されたことが、政権の致命傷になった。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は任期中には兄が借名株式投資、ロビー請託などの疑いで拘束されたし、権良淑(クォン・ヤンスク)夫人が米国留学中の息子のために家を買ってやるために実業家から金品を授受した事件が発端となり、大統領自ら命を絶つ事態となった。

 まだある。李明博(イ・ミョンバク)大統領は任期末に兄が金品授受容疑で拘束され、李大統領も退任後に不正容疑で拘束されたが尹政権で赦免となった。家族のいなかった朴槿恵(パク・グネ)大統領は、親友だった崔順実(チェ・スンシル)氏の不正が発覚し、弾劾され、大統領を罷免された。

 前大統領の文在寅氏は退任後、婿に対する就職請託疑惑が捜査対象になっているし、金正淑(キム・ジョンスク)夫人が大統領特活費を衣装費に流用したという疑惑もメディアで取りざたされている。

 韓国は強力な大統領制の国家だが、大統領の権力が弱まりはじめると、大統領に近い親戚や側近たちが権力を笠に私欲を貪ってきた数多の疑惑が浮上、それが政権のレームダックを加速させるというのが毎度毎度のパターンだった。

 だが現在の尹錫悦大統領は、当時の文在寅政権と民主党のネロナンブル(人の過ちには厳しい反面、身内の過ちは見て見ぬふりするダブルスタンダード)を批判し、「公平」「正義」といった価値観を前面に出して政権を握った経緯があるだけに、そこで親戚の不正が証明されるようなことになれば、他の政権より致命的な傷になりかねない。日韓関係を好転させる原動力となった尹大統領が、意外なところで足元を掬われる事態となる可能性も出てきた。