16式機動戦闘車(令和5年富士総合火力演習、陸上自衛隊のサイトより)

 平成28(2016)年末に配備開始された陸上自衛隊の最新鋭、「16式機動戦闘車」(以下MCV)は、世界に類を見ない正確な砲撃精度、機動性能を持っている。

 ロシアによるウクライナ侵略戦争では、改めて戦車の有用性が認識された一方、こうした機動戦闘車も極めて有用であることが証明されている。

 日本が誇る「10式(ひとまるしき)戦車」の陰に隠れてあまり注目を集めていないように見える16式機動戦闘車だが、いざ台湾有事、尖閣諸島有事となれば、大いに活躍が期待されている。

 しかし、今となっては日本の虎の子とも言える16式機動戦闘車も、実は鳴り物入りで開発が始まったわけではなかった。

 非常に厳しい自衛隊の予算内で、しかもアンチ自衛隊の反発を極力受けないように、ひっそりと開発がスタートした。

 今回は、この16式機動戦闘車の開発に携わった一人として、知られざる開発物語をお届けしたいと思う。

 16式機動戦闘車は、令和4(2022)年までに即応機動師団および旅団内機動連隊と地域配備師団、そして旅団内偵察戦闘大隊に約200両弱が逐次配備され、任務についている。

 現在の配備先は以下の通りだ。

即応機動師団:第2師団(旭川)、第6師団(神町)、第8師団(北熊本)

即応機動旅団:第5旅団(帯広)、第11旅団(真駒内)、第12旅団(相馬原)、第14旅団(善通寺)

地域配備師団:第9師団(青森)、第1師団(練馬)、第10師団(守山)、第3師団(千僧)、第4師団(福岡)

地域配備旅団:第13旅団(海田市)、第15旅団(那覇)

 (第7機甲師団(東千歳)は上記カテゴリーに入ってはいない)