- トルコ中銀は金融政策委員会で政策金利を17.5%から25%へと大幅に引き上げた。予想外の利上げはリラ下落に歯止めをかけたが、既にリラ高は一服している。
- 実質金利がマイナス圏に沈んでいるトルコに必要なのはさらなる利上げと、緊縮財政による貿易赤字の削減。
- だが、利下げこそが物価の安定につながると主張するエルドアン大統領を汲み、高インフレにもかかわらず利上げに消極的だったトルコにそれが可能だろうか。
(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
トルコ中銀は8月24日に開催した金融政策委員会(MPC)で、政策金利(1週間物レポ金利)を17.5%から25%へと大幅に引き上げた。今年6月に就任したハフィゼ・ガイ・エルカン中銀総裁の下、トルコ中銀の金融政策運営はタカ派になると期待されていたが、6月と7月のMPCでは小幅な利上げにとどまり、市場の失望を招いていた。
そのトルコ中銀が、8月には7.5%ポイントもの大幅な利上げに踏み込んだ。投資家はこの予想外の大幅利上げを好感し、リラを買い戻す動きを強めた。その結果、同日の通貨リラの対米ドルレートは終値で前日から5.2%上昇し、1米ドル=25.7874リラとなったが、すぐにリラ高は一服してしまった(図表1)。
【図表1 トルコリラの対米ドルレート】
中銀による大幅利上げは、リラの一方的な下落に歯止めをかけたという点で有効だった。しかし、相場の回復が持続しなかったことが示すように、トルコの物価に鑑みると、実質金利は依然としてマイナス圏にあり、利上げはまだまだ不十分だ(図表2)。
今後も中銀が金融引き締めを強化できなければ、リラの相場が本格的に持ち直す展開は描きにくい。
【図表2 トルコの政策金利】
現に、最新7月の消費者物価は前年比47.8%と前月(38.2%)から上昇が加速した。同月の生産者物価も同44.5%と前月(同40.4%)から上昇を加速させており、トルコのディスインフレは一服した模様だ。
いずれにしても、物価目標である5%には程遠いインフレであるため、トルコ中銀は政策金利をもっと引き上げる必要がある。