- 6月20日から21日にかけて、英国ロンドンでウクライナ復興会議が開催された。
- 復興会議では、各国首脳が民間企業への協力を呼びかけたが、その費用を誰がどのような形で負担するかは明らかではない。
- 60兆円に上ると言われる復興費用や債務再編を主導するのは欧米、とりわけ国境を接するEUだが、その覚悟はあるのだろうか。
(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
6月20日から21日にかけて、英国の首都ロンドンで、ウクライナ復興会議が開催された。会場となったロンドン市南東部グリニッジ地区のテムズ川南岸にある高級ホテルには、いわゆるG7諸国の外相らのみならず、60カ国以上の国や国際機関、民間企業、非政府組織(NGO)から1000人以上の出席者が詰めかけた。
終幕に伴う共同議長声明で、ウクライナのシュミハリ首相とクレバリー英外相は、支援国や国際機関がウクライナの戦後復興のために、新たに計600億ドル(約8.5兆円)を拠出することで合意したと発表した。日本も500万ドル(約7億円)の人道支援に加えて、国際協力機構(JICA)を通じた物的支援を行う予定だ。
ウクライナの戦後復興には民間企業の力が必要になるため、復興会議では、ホスト国である英国スナク首相など各国首脳が民間企業への協力を呼びかけた。実際、巨額のマネーが動くため、ウクライナ復興ビジネスに対する民間企業の関心は強まっているようだが、問題はその費用を誰がどのような形で負担するかということだ。
もちろん、ウクライナにその費用を賄う体力はない。そのため、各国による資金援助は不可欠だが、その中心を担うのは、ウクライナの軍事行動を積極的に支援した欧米であり、とりわけ国境を接している欧州連合(EU)となる。
問題は、そうした巨額の資金援助をウクライナに提供する覚悟が、本当に欧米にあるのかということだ。
それでは、戦後復興に必要な費用はどれほどの規模になるのか。世銀とウクライナは3月、戦後復興に必要な費用が4110億米ドル(約60兆円)に上ると発表した。
その後も、6月にはヘルソン州のカホフカ水力発電所の取水ダムが破壊されるなど、ウクライナのインフラはさらにダメージを負っており、戦後復興に必要な費用は増え続けている。
今後も戦争が続けば、戦後復興に必要な費用はさらに膨らむことになる。戦後復興に必要な費用が最終的にいくらになるか、現時点で見通すことは全く不可能だ。
その費用が巨額に上ることだけは確実であるが、その財源として、欧米は経済・金融制裁の一環として、凍結したロシアの「金融資産」を活用することを模索しているようだ。