ゼレンスキー流ミリタリー服が人気

 だが戦時下でも需要が高まり、売上が伸びている分野もある。例えば長持ちする携帯食品がそうだ。以前ドライフルーツを作っていた会社は、関連分野に進出してジャーキーなどを作るようになった。

 会社勤めをしていた人が失業し、自営業を始める場合も少なくない。例えば、田舎の実家に避難している際、ネット環境が良好で、おいしいコーヒーが飲めて、シェルターがある喫茶店がないと気づき、西ウクライナでお店を開いた人がいる。

 ミリタリー系のファッションの服を作る会社も増えた。戦争だから贅沢はできないが、ゼレンスキー大統領と同じようなカーキ色のジャンパーが欲しいという人は少なくないので、そこでビジネスが成り立つ。実はゼレンスキーが着ているミリタリー・ファッションの会社も、西部に避難し事業を継続している。その会社の若い経営者は、地元のアパレル意識をも変える影響力がある。古い職人の文化に、外国から学んだ新しい経営法を取り入れているのだ。

 空襲警報が出たときに皆が避難するために、丈夫なシェルターを作る会社も現れた。建設会社と手を組み、新築のアパートにWi-Fiが飛ぶきちんとしたシェルターを作る。建設関係の商品や道具を作り、丈夫な建物を建て、そして修復できる会社も求められている。

 自動車の修理や設備の製造、部品の会社も売上を伸ばしている。やはり戦争のときには、自動車は軍隊だけでなく一般市民にとっても欠かせないものであると気づかされた。以前のように新しい車を買えないので、中古車の販売やメンテナンスへの引きがある。

 2022年6月からはEUへの輸出に関税がかからなくなったので、特に食料関係の商品を輸出する会社も増えた。この結果、2022年のウクライナの貿易統計によると、EUへの貿易が約4割を占めた。また国外に商品を売るための仲介をしているコンサルティング会社も増えた。国外に避難し、現地のビジネス環境を調査してビジネスチャンスに変えたウクライナ人もたくさんいる。