核兵器搭載可能をロシアがしきりに警告するF-16戦闘機(6月14日撮影、米空軍のサイトより)

 ロシアによるウクライナ侵攻からすでに1年5カ月が過ぎた。ウクライナでは100万人以上の民間人が自宅を離れ、多くは国外に避難している。

 ウクライナ軍は今年6月からロシアに対して大規模な反転攻勢をかけているが、当初想定していたよりも効果はあがっていない。

 そんな中、米メディアの中には「ジョー・バイデン大統領は対ロシア戦に踏み切る準備をしているようだ(グローバル・リサーチ)」といった、米ロ間の戦争がいまにも始まるのではないかといった報道も散見される。

 その根拠となっているのが、7月中旬にバイデン氏が出した大統領令である。最大3000人の予備役をロシアとの潜在的な戦闘のためにヨーロッパに派遣すると、ホワイトハウスが発表したのだ。

 3000人がいつ派遣されるかは明言されていない。

 しかし、国防総省のダグラス・シムズ統合幕僚監部作戦部長は次のように述べ、ロシアに立ち向かう強い意思を示した。

「(今回の増派は)ロシアによるウクライナへの不法かつ理不尽な戦争を受け、NATOの東方防衛への揺るぎない支援と公約・責任を再確認するものだ」

 米国によるヨーロッパでの対ロシア軍事行動は、2014年から「大西洋決意作戦(アトランティック・オペレーション・ディゾルブ)という名称がつけられている。

 実は、今回の3000人という派兵規模は、数字的には些細なものに過ぎない。

 というのも、ペンタゴンはロシアがウクライナに侵攻して以来、すでに2万人の兵力をヨーロッパに送り込んでいるからだ。それにより欧州大陸に駐留する米兵の総数は現在10万人を超えている。