ワグネルの乱で心中穏やかではないプーチン大統領はカスピ海に面したダゲスタン共和国を訪問した(6月28日、写真:ロイター/アフロ)

「ロシアの核兵器がどうなるのか。それが最大の関心事でした」

 ロシアの民間軍事会社ワグネルが武装蜂起した時、米ワシントンの政府関係者は、ロシア政府が保有する核兵器の行方が何よりも気がかりだったという。

 国防総省の元高官だったエブリン・フォーカス氏は米メディアの取材に、「今回、ロシアで内乱があった時、すべての核施設を責任者がしっかり管理し続けられるかが最も心配だった」と述べている。

 というのも、核兵器が反乱軍の手に渡った場合、地球のかなりの地域を「消し去る力」が敵方に渡ることを意味するので、米政府関係者は神経を尖らせていた。

 ただ、ワグネルのエフゲニー・プリゴジン氏の反乱は最後の一線で立ち止まったため、安堵したという。ロシアの核体制に変化はなかった。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「プリゴジンを潰す」とまで発言したが、実際は発言の数時間後にプリゴジン氏と取引をして事態の収拾にあたった。

 今回のワグネルによる反乱劇で見えてきたものがある。

 それはプーチン氏の政治力が低下してきたのではないかということだ。

 すでに米政府内で語られ始めているが、ワグネルの台頭を短期間だけだが許してしまったことに、将来への憂慮が増した。

 かつてのプーチン氏であれば、短期間でさえこうした反乱は許さなかったはずだ。