戦争下でも事業拡大

 この兄弟はパン用のイーストの売上が減るのを見越してペットフードも作っている。コロナ禍で、家に長時間いるのでは寂しいし、散歩の理由が欲しいということで、犬や猫を飼う人が増えた。そのためペットフードの消費量も増えている。またロシアのメーカーが2014年以降、ウクライナ市場からほぼ撤退したので、シェアを拡大するチャンスになった。設備投資、新技術の導入、新商品も開発していたので、大きく発展した。

 今では32か国にペットフードを販売し、1300人の従業員が働いている大きな会社だ。コロナ禍の最中にリトアニアにも大きな工場を建て、ウクライナからの輸出ではなく、EU圏内で製造して直接ヨーロッパ市場で売ることにした。

 ペットフードの会社だから、動物にやさしい食べ物と環境を作るために努力を続けていた。ペットの世話や動物の心理を説明するラジオ番組まで制作していた。従業員は会社に飼い犬や猫をよく連れてくる。ウクライナ全土で「自分のペットを会社に連れてこよう」というキャンペーンも展開した。とても興味深い、新しいことに挑戦する会社だ。戦争が始まったとき、捨てられた犬や猫を会社で世話をして、新しい飼い主を探すことまでしていた。

 国内の避難者が西ウクライナに多く移り住み、それまでは自分で犬の食事を作っていた人も市販のペットフードを使うようになり、売上は伸びを見せた。戦争で犬や猫も避難生活をしなければならないので、かわいそうだと思う飼い主が多い。もう少しよいものを買おうとするので、プレミアムセグメントの商品を増やした。アメリカやヨーロッパの国々にも輸出している。

 戦争のときも将来に向けて明るく頑張っているこの兄弟からは見習うことが多い。