「しんかい6500」の耐圧殻から考える

 論より証拠、でこんな写真から確認し始めましょう。

 このページの真ん中あたりにある写真は日本の深海潜航艇「しんかい6500」の開発途上、加圧試験の途中で破裂した、チタン製耐圧殻の残骸です。

 直径2メートルの完全なであることが求められ、事実「しんかい6500」はそのように作られている

 さらにその精度は0.01ミリまで正確でないと、深海水圧のちょっとしたズレが破断を引き起こしてしまう。

 これが海洋工学の突き付けるプロの現実的なスペックになる。

 深海潜航艇は高い精度を持つ球で圧を保たないと、簡単に押しつぶされてしまう・・・。

日本の深海潜航艇「しんかい6500」(写真:ロイター/アフロ)

 こんなこと、小学生にだってコップの水の表面張力や、蛇口からしたたる水滴の構造から、完璧に理解させることが可能な1の1に過ぎない。

 ところが、公開されている情報が正しいとすれば、今回のタイタンの carbon fiber hull(船殻)は円筒形状になっている

 仮に上下の面が円盤であるなら、その角、尖端には大変な応力がかかってしまうのは、理学系出身で材料力学や破壊力学は助教授になってからかじった程度の私が見ても、ぞっとする代物になっている。

 こんな素人設計を気にせず、繰り返し深海に潜っていた?

 嫌な音は、円筒の縦方向に加わった圧縮破壊で、船核の縦方向に入ったミクロな亀裂であると考えるのが妥当と思われます。

 だから今回の起こるべくして起こった事態は事故というより事件と呼ぶべきではないか、と前回も今回も一貫して記しているわけです。