データシートの現実が読み取れない経営者?

 以下は推察ですが、自らも命を失ったラッシュCEOは、学卒程度の中途半端な航空機の耳学問から、強化炭素繊維の強度について、完全に誤った先入観と素人判断で突っ走ったのではないでしょうか?

 実際の物性データを見てみれば、炭素強化繊維の強度は、引張強度に関して7000メガパスカルなどと書いてあったりします。

 1メガパスカルは約9.8気圧ですから、耐圧7000メガパスカルなら6万8000気圧でも大丈夫、広島型原爆の爆心が10万気圧というけれど、その7割の爆風が来たって大丈夫なんだから、1桁小さい4000気圧程度のタイタニックを見るのに、タイタンの設計は万全・・・。

 なんて、素人の浅知恵で考えそうなのは、過去25年来、ペーパーテストで育ってきた東大生のダメ設計を見てきて、ごく当たり前にやらかす事態ですので、そのように察するわけです。

 端的には、炭素繊維素材には異方性、つまり方向によって強度の違いがあります。

 その種の素材を用いて成型すれば、球だって強い方向と弱い方向とに違いが出、簡単にゆがみを招来するでしょう。

 まして円筒形の舟殻を、どちら方向にどういう強度を持たせて設計したつもりか知りませんが、深海に幾度も沈めたり浮かべたりして、ミクロな疲労を蓄積していけば何が起きるか・・・。

 今回みたいなことが起きるわけです。つまり、突然「破断」「挫滅」終了です。

 一応、誤解のないように、40年前の私もそんな素人学生に過ぎなかった。

 少しは物理や装置のこと、その怖さなどを理解し始めたのは、私の場合は大学院生時代に教壇に立ち始め、学生実験など指導する責任を負って以降のことでした。

 学卒で受け身の実験実習しか知らず、あとはビジネススクールでMBAをとって机上の空論でベンチャーキャピタルとしてお金を動かしてきたラッシュCEOには、大きな勘違いがあったと思われる。

 先ほど嫌な音の正体は、鉛直の断面から船殻が縦方向に押し潰されてできた亀裂の可能性が考えられると記しました。

 もちろん断片的な報道から推察するだけの話ですが、カーボン素材はダイヤモンドの親戚ですから本当に硬く、いわゆる素材の粘り、弾性変形がほとんどありません。

 しかし、本稿冒頭でダイヤの破壊実験をお見せしたように、引っ張り強度試験の逆で、法外な圧で圧縮されるなどすれば、分子レベルでミクロな破断は普通に起きて当然です。

 紫外線や物理的・化学的なインパクト、アタックに繰り返しさらされるとへたりが生じてしまいます。

 そうした疲労が重なると、ある瞬間いきなり、大規模構造が挫滅しても何の不思議もないことが、平易な邦文記事英文動画も出ているのでリンクしておきましょう。