本稿の最後に炭素繊維強化プラスチック(CFRP=Carbon Fiber Reinforced Plastics)素材の基本的な特徴をおさらいしておきます。
軽い、硬い、腐食しないなど素晴らしいプラスの側面とともに、高価である、加工成型がしにくい、そしてデザインの自由度が低いといったデメリットが広く知られています。
そう、一度成型加工すると、その先、カーボンは形に柔軟性がほぼゼロなんです。
だから飛行機用を使うと素人判断した時点で、終わっていたことがここで分かります。
オーシャンゲートは、潜航艇用に素材から発注しなかったタイミングで、今日の破滅が約束されていたと見るべきでしょう。
ベンチャーキャピタル(VC)の吹いたラッパが、自滅をもたらした。
ラッシュCEOは、航空工学で聞きかじった炭素樹脂の強度をはき違え、基本的な設計のいろはもわきまえず安価な航空材料で行ける!と勘違いし、VCがVCを騙すピッチしゃべりで
「炭素樹脂なら7万気圧、つまり水深70キロでも大丈夫!」
「地球の最も深い深海底でもマリアナ海溝の11キロしかないのだから、海底観光は明日のリアルなビジネス!」
みたいにぶち上げたかもしれません。
そんな謳い文句に自分でも酔ってしまい、自身をも騙しながらファンドレイズに走ったのではないか・・・。
私もシリコンバレーでVC相手のピッチはしたことがありますので、思わず想像をたくましくしました。
2000~2010年代、全世界で吹き荒れた新自由主義バブルの嵐は。物質や科学に根拠を持たずとも、ラッパを吹くだけでお金が集まるという最低最悪の腐敗を生み出しました。
日本で発生した最悪事態の一つはSTAP細胞詐欺でしょう。
「夢の細胞ができた!」とぶち上げて株式公開すれば売り抜けられる。
そんな亡国の挙を繰り返してきたから、日本の教育も荒廃の色濃く、日々大学で教える私などの目には、青少年が明日を見渡せず、静かな笑顔で絶望するシーンが常態化しています。
もうそろそろ、こういう現実や科学の示す冷徹な現実を軽視する商法は卒業しなければなりません。