メディチ家はフィレンツェを本拠地に巨万の富を築いた(写真:アフロ)

ルネサンスが花開いた15世紀のイタリアは、現代につながる商いの芽が吹きはじめた時期でもある。特にフィレンツェにおけるメディチ家の合理的な事業組織は、封建的な王室とは好対照をなしていた。今回は、このメディチ家の銀行が、旧来の体制とどのように接したのかについて考えてみたい。国家同士の対立が深まる現代に、情報化とグローバル企業が、どのように政治的に接していけばよいのかのヒントが隠されているかもしれないからだ。

(平山 賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

民間より国家の信用度が高いのは当たり前なのか?

 まず、次のような問いから始めたい。

 国債の金利を無リスク金利と称しているように、われわれは、民間よりも国家の信用度が高いものだと思い込んでいないだろうか?

 政府の信用度は、一般的には民間企業などよりも高く評価されているだけに、当然のように考えているかもしれない。

 信用度は、簡単に言えば、貸したお金が返済される可能性を示しており、信用度の高さはリスクの低さを意味する。企業に貸したお金は倒産などにより返ってこないことはあっても、国に貸したお金の返済を心配することはそれほど多くないはず(近年は、日本国債の発行残高が多くなりすぎて、心配になっている読者は多いかもしれないが)。

 信用度が高いほど、貸したまま返済されない可能性は低下するため、安心して資金を提供できる。それだけ信用リスクが低いと言ってよいだろう。

 そこで、信用リスクが高い相手が、どうしてもお金を貸してくれと言ってきたならばどうするだろう。