(写真はすべて牧村あきこ)
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(牧村あきこ:土木フォトライター)

 歩いていると不思議な感覚に包まれる橋が、温泉地の絶景ポイントにある。金沢の奥座敷、山中温泉郷(石川県加賀市)を流れる大聖寺川に架かる「あやとりはし」である。

 最大の特徴は、橋の断面が四角形ではなく、三角形であることだ。こういう橋はめったにお目にかかれない。

 例えば次の写真は大夕張ダム建設時にダム湖(シューパロ湖)に架けられた鉄道橋で、三弦橋(正式名称:下夕張森林鉄道夕張岳線「第一号橋梁」)と呼ばれている。

ダム完成後、三弦橋はシューパロ湖に沈み、よほどの渇水時以外は見ることはできない(Ooyubari9201, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 上弦が1本、下弦が2本で構成され、断面が三角形となる「三弦トラス」である。人や車両が通る三弦トラスの橋は、それほど多くない。

「あやとりはし」の断面は、上弦2本下弦1本の逆三角形で、逆三弦トラス構造になっている。

大聖寺川の右岸より撮影

 シューパロ湖の三弦橋は列車の走行部分が三角断面の下部にある下路式だが、あやとりはしは下路でも上路でもない中路式。三角断面の中央を通る歩道廊は、少し細めのワイヤーで吊られた構造になっている。

 これだけでも十分おもしろいのだが、さらにS字にカーブしているのがすごい。