山中温泉は鶴仙渓(かくせんけい)という渓谷に沿うように温泉宿が立ち並ぶ。

 あやとりはしの直下は道明ヶ淵と呼ばれる景勝地で、春夏秋冬の美しさを橋上から堪能できる。

上流方向に季節限定の川床が見える。赤い日よけ傘が緑によく映えている

 左岸側から橋をみる。次の写真、右下にある背の低いコンクリートが、前出の航空写真における緑の丸だ。

左下に橋の銘板がある

 橋が作られたのは1991年(平成3年)。いけばな草月流家元・勅使河原宏氏により、鶴仙渓にふさわしい橋としてデザインされ、色は赤味がかった紫色のワインローズが採用された。

 最大支間長は66.9m。渓谷から見上げたあやとりはしは、この地の龍伝説を彷彿とさせる、空を翔ける龍の姿のようでもある。

 逆三弦トラスを採用する絶対的な理由はなかったように思うが、実際にこうして橋を眺め渡ってみると、これは必然だったのかもしれないな…と感じる。

 最後に、左岸側からあやとりはしを3倍速で渡る動画をご覧いただきたい。下り勾配なので、実際に歩いていると徐々に早足になり、逆三弦トラスの中に吸い込まれていくような、そんな不思議な感覚になってくる。

※参考資料
「あやとりはしの設計・製作・架設」/川田工業

◎本稿は、自然と土木を深掘りする「探検ウォークしてみない?」に2022年7月22日に掲載された記事を転載したものです。