後に満州の影の支配者と呼ばれた甘粕正彦も、この時期に関東軍の指揮の下で諜報活動や各種工作に勤しんでいたとされます。その代表的な仕事として、清朝最後の皇帝であった溥儀を軟禁先の天津から満州へ脱出させたことが挙げられます。また溥儀の夫人であった婉容は、「男装の麗人」と呼ばれた川島芳子が護送したとされています。
ちなみに沢木耕太郎氏の最新ノンフィクション作品『天路の旅人』の主人公も、中国大陸の奥深くまで潜入した旧日本軍の「密偵」でした。
以上のような過去に日本が行った様々な諜報活動、謀略の歴史は、抗日ドラマなどで取り上げられることもあり、今も一部の中国人にとって苦々しい記憶として残っています。そうした背景もあり、中国は現代の日本の諜報活動を強く警戒しているのではないかと推察されます。
中国のエンタメ作品はスパイだらけ
ただ中国人は、外国からのスパイを警戒する一方、スパイもののエンタメ作品には並々ならぬ関心を持っていたりもします。むしろ「大好き」と言ってもいいかもしれません。
たとえば中国制作のドラマや映画は、スパイが主人公の作品が数多くあります。エンタメ作品における主人公の職業について統計を取れば、中国ではスパイが確実に上位に入ってくるでしょう。