重視すべきは「量の拡大」より「一人当たり」

 震災と人口動態という2つの論点だけを取り上げても、2050年の将来世代から今を生きる現代世代に対して、経済政策について次のような助言をすることができるだろう。

 まず、震災からの復興のため、100兆円を大きく上回る規模で財政赤字が追加的に拡大し、何らかの負の影響を生む可能性があると考えるのであれば、予めそれをできるだけ小さくするようにしておいた方が良い。

 政府の歳入・歳出バランスの持続可能性に対する信認を高めておけば、その分、震災に伴う経済ショックを乗り切りのためのコストは小さくて済むだろう。

 他方、人口の高齢化・減少は、次の30年も変わらない。少子化対策は別途考えるべき重要な問題だが、安定した経済運営のためには、その避けられない人口の高齢化・減少を所与として政策設計を行わなくてはならない。

 日本経済のボリュームを、これからの人口動態の下にあっても昭和の目線で増やそうとするのは合理的ではない。

 一人当たりで考えることがより重要であり、さらにボリュームの拡大によって問題を解決しようとするアプローチではきっとうまくいかいない。