第101回全国高校サッカー選手権で岡山県勢初の優勝を飾り、優勝旗とともに凱旋する岡山学芸館高校の選手ら(写真:山陽新聞/共同通信イメージズ)

有力校には将来のプロ候補として嘱望されるタレントが集まる高校サッカー。そんなエリート集団とは対極の学校でも日本一になれる——。2023年1月の第101回全国高校サッカー選手権大会決勝戦で勝利し、岡山県勢として初めて優勝した岡山学芸館高校には、プロ内定者や中学時代から注目されていた選手はひとりもいなかった。いったいどうやって全国制覇を成し遂げたのか。同校のサッカー部監督は「3つの軸」を大切にしていたという。

(東野 望:フリーライター)

過去の最高戦績は2018年のベスト16

 全国の高校サッカー関係者にとって、最大の目標である「全国高校サッカー選手権大会」。岡山学芸館高校は2021年までに3度出場するも、最高戦績は2018年のベスト16だった。

 しかし、同校サッカー部の監督である高原良明氏は当時、恩師が残した「このチームは、だんだん強くなると思うよ」という言葉通りの感触を得ていたという。高原氏は著書『空き地から日本一! 奇跡を起こした雑草軍団 岡山学芸館高校のチームが成長する組織づくり』(竹書房)で、“学芸ファミリー”の一体感の秘訣を語っている。

選手の個性が一つにまとまったとき、チームは個々の能力以上の強さを持ちます。
1回戦より2回戦、さらに3回戦と、試合をするたびにチームが強くなっているのを感じました。

ホームグラウンドは空き地、選手からはタバコの臭い

 日本一という華々しい戦績を収めた同校サッカー部だが、かつてはお世辞にも強いとは言えないチームだった。その歩みは2003年に遡る。

 高原氏と大学時代の親友・吉谷剛氏はほぼ同時に指導者として同校に着任した。だが、当時のサッカー部の練習場は学校から車で5分ほど離れた場所。ただの空き地だった。

 学校のグラウンドは野球部が使用しており使えず、サッカー部には部室もなかった。雨が降れば木陰で着替えるという不遇っぷりだ。

 ハード面だけでなく、部員もサッカー以前にヤンチャな生徒が多く、サッカーの指導よりも生活指導がメインだったという。

練習場に来た生徒からタバコの臭いがしたため、問い詰めると学校から移動する間に吸っていたことが判明するといったことも珍しくありませんでした。
生徒が出入りをしているらしいというパチンコ屋を巡回したらサッカー部員がスロットを打っている姿を見つけたことさえありました。

岡山学芸館高校サッカー部の高原良明監督(写真:山陽新聞/共同通信イメージズ)