日本一のカギは「人づくり」「チームづくり」「組織づくり」

 そんな部員たちを前に高原氏が大切にしたのは3つの軸だった。

 まずは、自分の課題と向き合って成長し続ける気持ちと行動力を持つ人を育てる「人づくり」。次に「チームづくり」として、「岡山で一番頑張るチーム」を目指して勝利の土台となる泥臭いハードワークを重ねた。

 いくら練習効率を上げようとも、戦うスピリットがなければ勝負にならないと高原氏は考える。「組織づくり」では選手間での信頼が厚い選手を主将に据え、すべての部員に役割を持たせて選手が主体的に部を動かす体制を整えた。高原氏は、そこには欠かせないものがあるという。

組織づくりとして欠かせないのは、スタッフの仲の良さです。その点、学芸館はしっかりとまとまってくれています。スタッフがバラバラであれば、チームは一つになれません。以前のように、監督が絶対的な存在で、すべてトップダウンで指示をする時代でもなくなっていると思います。

「ニコイチ」の監督とコーチ

 2008年までは外部指導員が監督であったが、退任後は監督に高原氏、コーチに吉谷氏が就任した。高原氏は大雑把なタイプで、吉谷氏は細かく考えるタイプ。正反対の性格を持つ2人だが、もともと「親友」という関係性から意見の衝突を悪い方向に影響させず、多角的に見るメリットに変えてきたという。

 同校の校長・森健太郎氏は、高原氏と吉谷氏の関係性を「ニコイチ」と表現。高い目標を設定して力強くチームをけん引する高原氏、包容力をもって選手をサポートする吉谷氏、2人は相互補完する存在だというわけだ。

 通常チーム内に発言権がある指導者を2人置くと対立しかねないが、高原氏と吉谷氏の2人はバランスが取れていたようだ。