就任後、岸田首相と会談した日本銀行の植田和男総裁。2%の物価目標を掲げた政府と日銀の共同声明は見直さないことで一致した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

日本銀行の総裁が10年ぶりに交代し、新たに植田和男氏が就任した。記者会見では現行の金融緩和を継続する考えを示したが、長期に及んだ異次元緩和の「手仕舞い」にどう取り組むかが注目点となる。5月には新型コロナウイルスの感染法上の分類が、季節性インフルエンザと同じ「5類」となり、日本経済がコロナ禍からの“復帰”も問われている。日銀で要職を歴任し、現在は日本証券アナリスト協会の専務理事を務める神津多可思氏が、今後、日本の経済政策に必要な視座を指摘する。(JBpress編集部)

(神津 多可思:日本証券アナリスト協会専務理事)

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日本の経済政策は総需要刺激が中心だったが

 10年ぶりとなる新しい日本銀行総裁の就任を契機に、これまでの異次元緩和下でできたこと、できなかったことの振り返りが盛んになされている。

 できなかったこととしてまず挙げられるのが、日本経済の潜在成長力がなお高まっていない点だろう。インフレだけでなくデフレでさえも貨幣的な現象であるとした整理。デフレでさえなくなれば日本経済で良い循環が始まるとした根拠。いずれも今から振り返れば、もっとよく議論すべきだったと反省させられる。

 しかし、ともあれ先をみて議論をすべきだろう。今、私たちが立っているところから、日本経済の潜在成長力を高めていくためにはどうすべきか。さらにそれは、そもそも日本経済全体でみた経済の規模の拡大を加速することを意味するのか。考えるべき難問はたくさんある。

 1980年代後半のバブルが崩壊して以来、日本経済が絶好調と言われたことはない。そのため、日本の財政・金融政策は傾向的に総需要刺激を強化してきた。

 他方で、今日よく言われている潜在成長力が高まらないという話は、総供給の側の話である。