全体の10%程度を占める日本のゾンビ企業
バブル崩壊後の日本経済にも景気循環はあった。しかし、景気の山谷を問わず、傾向としてより総需要を刺激する財政・金融政策が採られてきた。そのため、ビジネスの新陳代謝を進め、産業構造を刷新して次の経済成長の下地を作るという過程が相当部分圧縮されてきたのではないだろうか。
「ゾンビ企業」という言葉をよく聞くが、その厳密な定義は1つではない。
国際決済銀行(BIS)は、設立10年超で、かつ3年以上にわたってそのビジネスを通じて得られる利益が必要な利払いをカバーできない企業としている。帝国データバンクでは、日本の企業全体に占めるゾンビ企業の比率が最近でも10%程度あると推計している。
そうした定義でのゾンビ企業は、別の言葉で言えば、今後、債権者に迷惑をかけずにビジネスを続けることができないと考えられる企業のことだ。
混同すべきでないのは、低収益企業が全てゾンビ企業というわけではないことだ。誰にも迷惑をかけず、しかし売り上げも雇用も増えない企業もある。小さなビジネスの中には、売り上げや雇用は伸ばせなくても地域や昔ながらの顧客に支えられて経営を続けているところも多い。マクロ経済全体の成長率の底上げを図るために、そういう企業までも不必要であるかのように言う議論は誤りだと思う。
他方で、上記の定義によるゾンビ企業は、返済を約束している資金や雇用を固定したまま、将来展望が開けないビジネスを継続していることになる。
そうした企業から、資金と雇用を解放し、将来性のある分野へと配置転換できれば、その分、日本経済全体の成長率も高まるだろう。上述したように、それを実現する過程では、失業・倒産といった摩擦が生じる。しかし、それに耐えなければ、成長率の底上げもまた実現できない。
ゾンビ企業を延命させていたのでは、日本経済の潜在成長力は高まらない。生産年齢人口が減少をしている下では、なおさらそうだ。
したがって、日本経済から不振感を払拭し、成長軌道へ乗せるには、その摩擦への対応に力を入れなければならない。