最近、おじさんが意外な場所で働く姿を見かける。給料が上がらない、本当に年金もらえるの?AIに仕事を奪われる……!将来の不安から副業を始める中高年男性が増えているのだ。
おじさんたちはどんな副業をしているのか、どれくらい稼いでいるのか、あるいは全く稼げていないのか。組織をはみ出し、副業を始める全力おじさんの姿をより深くリポートする連載。今回は番外編、おじさんのリスキリングについて。(若月澪子:フリーライター)
リスキリング(学び直し)という言葉をよく聞く。中高年のおじさんたちも「何かやらなきゃいけないとは思うけれど、何をすればいいのかわからない」という人は多いのではないか。
その中でも、リスキリングが「待ったなし」の中高年がいる。「衰退産業」と呼ばれる業種で働く人たちである。
封筒を製造する中小企業で働いているという都内在住のAさん(52)が会社からリストラの相談を受けたのは、3年ほど前のことだ。
「給料は上がるどころか下がる一方で、社長から『おまえには月18万円しか払えないよ』と言われてしまって」
勤め先は従業員30人ほどの中小企業。周りの封筒の製造会社は、ペーパーレス化や郵送物の減少で次々と倒産していた。
この時のAさんは、これを好機と考えた。
「いずれIT系の仕事がしてみたいと、密かに勉強していたんです」
Aさんは個人でリスキリングを始めていたのである。
リスキリングとは、仕事で新しいステージに進むために、自分にはないスキルを勉強すること。これまでの仕事の延長線上で勉強する場合と、全く新しい分野を勉強する場合の2パターンがある。
Aさんの場合、IT系は全く新しい世界だ。
ちなみに、Aさんは高校卒業以来、ITの仕事をしたことは一度もない。封筒の会社は勤続18年になるが、そこでは封筒を製造する機械のオペレーションが主な仕事だった。