「仮想将来世代」になりきって考える

 これまでの経験を未来に活かそうとする時、「フューチャー・デザイン」というアプローチがある。これは、今を生きる世代が「仮想将来世代」になりきることで、より良い未来を実現する道筋を少しでもはっきり描き出そうとする試みである。

 筆者も一度ワークショップに参加したことがあるが、将来世代になりきるためには、すっかり身に着いてしまった、足元からの連続で未来を描こうとする、フォーキャスト思考から抜け出さないといけない。

 そうではなくて、様々な出来事が起こってしまった後の未来に身を置いて、そこから今を振り返るバックキャストを心掛けなくてはいけないのである。

 特に日本経済の未来を考える時、一定年齢以上の人は、無意識にバブル崩壊前の日本経済の雰囲気を取り戻そうとしてしまうところもあるのではないだろうか。

 しかし、高齢化と人口減少の影響は、少なくとも次の何十年かは続く。そして、バブル崩壊前の雰囲気を現役として味わったことのない世代が、既に社会の中核として活躍する時代になりつつある。

 これからやってくる未来はそういう未来である。フォーキャスト思考だけではうまく描けない。