個人宅に設置された監視カメラ個人宅に設置された監視カメラ

 ドライブレコーダーや防犯カメラの映像など、決定的瞬間をとらえた映像が、以前にも増して報道番組で使われるようになった。あらゆる場所にカメラが設置される現状には人権やプライバシーの観点で不安も覚えるが、一方でカメラの増設によって飛躍的に事件の検挙率は上がっている。

 技術革新によって、警察の捜査能力はいかに向上しているのか。『刑事捜査の最前線』(講談社)を上梓した共同通信編集委員の甲斐竜一朗氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──この10年ほどで、街中の防犯カメラの設置台数が大幅に増えたと書かれています。

甲斐竜一朗氏(以下、甲斐):警視庁が新宿・歌舞伎町に50台の防犯カメラを設置したのは2002年のこと。当時、全国の刑法犯の認知件数は280万件ほどと、その数を増やしていました。その状況に危機感を抱いた警視庁が防犯カメラの設置に踏み切ったのです。

 その後、渋谷や池袋などにもそれぞれ数十台ずつ防犯カメラの設置を増やしました。ただ、警察が独自に設置するカメラの台数はその程度の数でしかありません。その中で数を増やしているのは、行政、商店街、個人宅などが設置している防犯カメラ。そうした防犯カメラを警察が利用しているんですね。

 警視庁の殺人、強姦、放火といった重要犯罪の検挙率は、2010年にはおよそ63%でしたが、2021年には100%を超えました。2021年の警視庁管内の重要犯罪の発生件数が1223件だったということを考えると、すさまじい検挙数です。その捜査力の背景には、防犯カメラの影響も大きいと言われています。

新宿・歌舞伎町の防犯カメラ。2006年10月時点。20年近く前の歌舞伎町はこんな感じだった(写真:明田和也/アフロ)新宿・歌舞伎町の防犯カメラ。2006年10月時点。20年近く前の歌舞伎町はこんな感じだった(写真:明田和也/アフロ)

──育児などで時短勤務になった女性警察官が、防犯カメラの解析作業で活躍しているという話が印象的でした。

甲斐:事件は時間を選ばずに発生するので、育児をする時間帯に合わせて刑事課にいる女性警官が担当をするのは難しいため、従来は時短勤務になると、交通、生活安全など比較的に勤務時間が固定されている係に異動になるケースが一般的でした。

 でも、せっかく刑事課で育成された人材が刑事課を離れるのはもったいない。そこで、当時の警視庁の刑事部長がなんとかできないものかと考えた時に、防犯カメラを活用した捜査が警察署でどんどん行われるようになってきたのです。

 その後、警察署の刑事課の中に「刑事総務係」を新設し、警視庁の捜査支援分析センターで画像解析のトレーニング積んだ女性警官が防犯カメラの解析に専念するようになりました。やがて全警察署に刑事総務係ができるようになり、検挙率の向上につながりました。

──30年前に導入されたDNA型鑑定の技術は数年ごとの技術革新を経て、目覚ましく精度が向上したと書かれています。