現場の指紋はどうやって採取するのか?

甲斐:それもやっています。他にも、たとえば被疑者だと警察が睨んでマークしている相手を張り込んで、その人が出したゴミを回収して紙コップなどが中にあれば、そこに付着した唾液を採取したりもします。

 しかし、そのような方法で採取したDNA型データが、現場に残された遺留物DNA型データや容疑者DNA型データと一致したとしても、それを証拠として使うことはできません。

──えっ、できないのですか?

甲斐:ただ、そのDNA型データの一致によってマークしている相手が犯人であることは分かるので、警察はそこから自信を持って任意同行をかけて、正式にその人から任意で唾液を採取して鑑定にかけるのです。一致することは分かっているし、そこで一致すれば逮捕状が取れます。

──事件現場では犯人がいかに「指紋を残すか」が注目されますが、警察はどのように、事件現場から指紋を採取して照合しているのでしょうか?

甲斐:鑑識の中に指紋係という部署があります。指紋を採取する人と、指紋の照合をする人に担当が分かれます。

──採取する人と照合する人は別なのですね。

甲斐:はい。同じ人がその作業をすると、あまりよろしくないと考えられています。作為が生まれる可能性があるからです。

 指紋の採取の方法はいろいろありますが、一般的なのは、アルミの粉末を現場の指紋が付いていそうなところにかけて、刷毛で掃く。そして、指紋を見つけると、ゼラチン紙に転写して採取します。

 指紋は、DNAよりもはるか以前から警察の中でデータベース化されています。警察庁の指紋センターに、指紋自動識別システムというものがあり、全国の警察が集めた指紋をライブスキャナにかけると、指紋自動識別システムにデータが送られ、過去の容疑者の指紋や別の事件の現場で採取された指紋が照合されます。

 ただ、この装置では完全な指紋の一致とはなりません。過去のデータベースとの照合からいくつか似た指紋が検出されて、一番似ている指紋、次に似ている指紋といったように似ている順に上からランキング化されて複数の指紋が提示されます。それを最終的に、必ず鑑定官が人の目で確認します。