貴重なタンパク源

 蚕といっても繭を作る前の幼虫で、しかも中国の蚕は緑色をしていてひと回り大きい。それが調理台のボウルの中にいた。

写真はイメージ

 その後の宴席は乾杯からはじまった。乾杯というからには、文字通りビールも一気に飲み干さなければならないのが中国だった。

 それから料理が運ばれてきた。私が選んだはずの犬や蚕がある。ところが、ここでも私の役割があった。

 料理はまず主賓が箸をつけなければならない。そうしなければ、他の人たちが食べることはできない。まずは主賓がひと口。それがルールだった。

 もはや迷ったり、躊躇したりしている場合ではなかった。嫌な顔をすることも許されない。

 調理場で選んだ時点で、食べる覚悟はできていた。だが、それがいの一番になるとは思わなかっただけだ。