スウェーデンのウルフ・クリステルソン首相(写真:ロイター/アフロ)

 今年1月21日、スウェーデンでイスラム教の聖典である「コーラン」が公の場所で焼却される事態が発生した。

 この日、スウェーデンの首都ストックホルムにあるトルコ大使館前で、複数の団体が反トルコデモを行った。そうした中、反イスラムを主張する極右活動家のラスムス・パルダン氏がコーランに火を着けて焼却してしまったのだ。

コーランに火を着けるスウェーデンの極右活動家ラスムス・パルダン(写真:ロイター/アフロ)

 このパルダン氏の行為、そしてスウェーデン政府の対応について、世界中のイスラム教徒から非難の声が上がった。なぜスウェーデン政府に批判が集まるのかと言えば、パルダン氏は数日前からコーランを燃やすことを公言していたにも関わらず、スウェーデン警察は「表現の自由」を理由に彼のデモ活動を阻止しなかったからだ。

NATO加盟を熱望するスウェーデン

 スウェーデンにもっとも強く抗議したのはトルコ政府だった。

 というのもトルコとスウェーデンは、この事件の前から緊張関係にあったからだ。スウェーデンは伝統的に難民受け入れに寛容な国で、トルコから逃れたクルド人も多く移り住んでいる。その数は10万人にものぼるとされる。そしてその中には、クルド人の独立を目指すトルコの反政府組織「クルド労働者党(PKK)」のメンバーもいる。また2016年にトルコで発生したクーデター未遂事件に関与したとして訴えられているトルコ人男性もスウェーデンに潜伏していると、トルコ政府は見ている。

 こうした中、昨年、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。NATO非加盟国であるスウェーデンとフィンランドは、同じくNATO非加盟のウクライナが侵攻される様子を目の当たりにし、NATO加盟の必要性を痛感した。

 両国が行ったNATO加盟申請のニュースは当時大きく扱われたが、加盟はまだ実現していない。NATOへの加盟には加盟国すべての承認が必要になるのだが、実はこれがネックになっているのだ。特にトルコがすんなり認めようとはしていないからだ。