人口減・高齢化が著しい農山村の進むべき道は(写真はイメージ)

「やばい」「嫌がらせ」。Google検索窓に「別子山」と打ち込むと、こんなワードがサジェストされる。愛媛県新居浜市の別子山(べっしやま)地域に移り住んだ地域おこし協力隊員が配信したYouTube動画が話題を呼び、この旧村地帯はいま、世間からそんなイメージを抱かれている。かつて銅山として栄えた別子山は、ここからどう立ち直るか。そもそもなぜ、こうしたトラブルが起きてしまったのか。農山村への移住に詳しい国学院大学の嵩和雄(かさみ・かずお)准教授に聞いた。(河合達郎:岐阜県本巣市地域おこし協力隊、フリーライター)

集落の草刈りのルール

――話題になった「移住失敗」をどうみましたか。

嵩和雄氏(以下、嵩氏):私は学生時代から約9年間、熊本県小国町に移住し、地域づくり活動に従事していました。当時住んでいた隣町で、集落の草刈りがあった日のことです。

 自分の自宅周辺から草刈りをしたところ、その後の飲み会で地域の人から怒られました。「集落の草刈りというのは共有部分をやるんだ」「自宅の周りは普段からやっておくもんだ」と。

 田舎には見えにくいルールがたくさんあります。地域にとっては当たり前のものでも、移住者にはわかりません。現代社会や都会的な価値観からすると、合理的でないと感じられるものもあるでしょう。

 例えば、移住者の新規就農時によくあるのが水利権の問題です。農業において水は死活問題で、かつては殺し合いが起きたほど重要な問題です。これは都会で暮らしている人には絶対にわからない価値観ですよね。土地は借りられたものの、水の話をきちんとしていなかった、という意思疎通の問題です。

 今回の件も、コミュニケーション不足、相互理解の欠如、といったことが根本にあるのではないでしょうか。

――それはどんなところに感じましたか。