「描く人、安彦良和」展示風景。描き下ろしイラストを説明する安彦良和氏 ©︎創通・サンライズ ©︎東北新社 ©︎高千穂&スタジオぬえ・サンライズ ©︎安彦良和/講談社 ©︎安彦良和/KADOKAWA ©︎安彦良和/THMS ©︎安彦良和
(ライター、構成作家:川岸 徹)
『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイナー兼アニメーションディレクターであり、漫画家としても活躍する安彦良和。約半世紀にわたる創作活動を展望する回顧展「描く人、安彦良和」が渋谷区立松濤美術館で開幕した。
安彦良和の回顧展が全国を巡回中
日本を代表するアニメーター、安彦良和。代表作としてもっぱらキャラクターデザイナー兼アニメーションディレクターを務めた『機動戦士ガンダム』が挙げられるが、携わった作品は枚挙にいとまがない。『宇宙戦艦ヤマト』『勇者ライディーン』『超電磁ロボ コン・バトラーV』『無敵超人ザンボット3』『クラッシャージョウ』『アリオン』『ヴイナス戦記』……。JBpress読者の世代には、タイトルを聞いただけでキャラクターや名シーンが頭の中に蘇ってくるという人も多いのではないか。
そんな安彦良和の半世紀にわたる創作活動を展観する回顧展「描く人、安彦良和」が全国の美術館を巡回している。神戸、島根、青森、北海道に続き、東京の会場である渋谷区立松濤美術館にて開幕した。内覧会には安彦良和さんご本人が出席され、作品にまつわる思い出話を披露してくれた。そのコメントを交えながら、展覧会会場の様子や主な作品を紹介したい。
虫プロの採用試験に一発合格
「描く人、安彦良和」展示風景。少年時代に遠軽の実家で使用した机
安彦良和は1947年、北海道遠軽町に開拓民3世として生まれた。鈴木光明『織田信長』、横山光輝『鉄人28号』、手塚治虫『新人類フウムーン』などに触発され、小学校の頃から漫画を描き始める。1966年、歴史教師になることを目指し、弘前大学文学科の西洋史専攻に進学。入学直後の6月からスペイン内戦に着想を得た長編漫画『遙かなるタホ河の流れ』を描き始め、翌年9月に完成した。
大学ノート2冊に描かれた総ページ数200ページ、全733コマから成る本編には、「革命…新しい国家。人民戦線…反ファシズム…なぜだ。この娘の前ではなぜこれらの言葉はこんなにも空々しく響くのだろう…」といった台詞も登場する。
「大学時代は学生運動に身を投じ、学生新聞を立ち上げるなどの活動を行いました。弘前大学に機動隊が突入した際に、僕は不在でしたがリーダー格と目されていたため逮捕され、大学は退学処分になってしまいます。それから東京へ出て、偶然見つけた虫プロダクションのアニメーター募集に応募。採用試験に持っていった『遙かなるタホ河の流れ』が評価され、一発で合格しました。長編漫画を描いていて、本当によかったです」(安彦さん)