ガンダムの“マスクと色”を担当

「描く人、安彦良和」展示風景。『機動戦士ガンダム』の初期デザイン案を説明する安彦氏 ©︎創通・サンライズ

 1979年に放映が開始された『機動戦士ガンダム』ではキャラクターデザインとアニメーションディレクターを務めた。作品に登場するモビルスーツと呼ばれるロボットのデザインは大河原邦男が担当したが、安彦のアイデアも取り入れられている。

「大河原さんがデザインしたガンダムには口が付いていて、それが気に入らなかった。全体的な配色も好きではなかった。それで意見を出したんです。ガンダムの口はなくなり、マスク姿になった。今でもガンダムの話が出ると、“マスクと色はオレの仕事だ!”と自慢しているんです」(安彦さん)

「描く人、安彦良和」展示風景。『 機動戦士ガンダム』(劇場版)、『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』宣伝ポスター用イラスト原画 1981年 © 創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』の成功によってアニメーターとしての人気を不動のものにした安彦だが、その地位に留まることなく次々に新しい挑戦を続けた。『巨神ゴーグ』では原作、キャラクターデザイン、作画など、すべての作業に安彦が関わっている。

「アニメ制作の現場は分業が当たり前の時代になっていた。でも、自分の手でやり遂げたかったんです。『巨神ゴーグ』はスティーブンソンの名作『宝島』を今風の物語にした作品。しかし、視聴者にはウケなかった。武器をもたないロボットは、興味をもってもらえないんですよ。ヒットはしませんでしたが、愛着のある一作です」(安彦さん)