また、不払い解消のためにNHKは訪問営業を実施してきましたが、その振る舞いに対して多くの苦情がありました。さらに、訪問営業にかかる費用が年間600億〜700億円にのぼり「高コスト体質」が問題視されてきました。実に受信料収入の約1割に相当します。

 そうした悪評とコロナ禍の影響もあって、NHKは2021年度から訪問営業を大幅に減らしています。しかし、訪問営業がなければ、不払い者が増えて不公平が拡大します。不公平感が新たな不払い者を生む可能性があります。徴収の仕組みの合理性を欠いたままでは、受信料制度への信頼感を獲得することはできません。

この4月から始まる「罰金」制度

 訪問営業の縮小と引き換えのように、受信料不払い者に対して、受信料の2倍の「割増金」を上乗せして請求できる制度が4月から始まります。これは「罰金」制度とも捉えられ、早速、SNSを中心に反発の声が挙がっています。

 この制度をどのように運用するのか関心が集まりますが、就任したばかりの稲葉会長は「条件に該当するからといって一律に請求するわけではない」と慎重な姿勢を示しています。アクセルとブレーキを同時に踏むような感じで、スタンスがわかりにくくなっています。

 このわかりにくさを私なりに解きほぐしてみました。

 もともと受信料徴収に批判的な人たちの反感を買うのは織り込み済みです。そうした声が必要以上に広がらないことが大事なので、「ブレーキ」をかける発言がなされるのでしょう。

 もっと大事なのは、ニュースや記事で取り上げられ、「罰金を取られるかもしれない」と多くの国民に思わせることです。国民の善意に訴え、受信料を今まで通りに払ってもらう効果を狙ったのではないでしょうか。