ゼレンスキー大統領(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 昨年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻してから、11カ月が経過した。しかし、停戦への動きは見られず、戦争は拡大する方向である。

西側が相次ぎ主力戦車を供与

 1月25日、ドイツのショルツ首相は、ドイツ製戦車「レオパルト2-A6」をウクライナに提供すると表明した。とりあえずは、14両を渡すが、この戦車は世界最強の戦車の一つであり、多くのヨーロッパ諸国が採用している。輸入している国がウクライナに同戦車を供与するときには、製造国ドイツの承認が必要である。

 ポーランドは早々と供与の意向を示してきたが、ドイツは供与に慎重であった。それは、戦車の供与で戦争が拡大することを危惧したからであり、またナチスドイツが引き起こした第二次世界大戦の反省から、他国への武器提供には反対する国民が多いからである。

 しかし、アメリカ、イギリス、ポーランド、バルト三国などから強い圧力があり、NATOの結束を乱さないために、ショルツ政権は苦渋の決断を迫られたのである。

 独国防省は、他の保有国と合計して2個戦車大隊編成が可能な88両を供与することを考えている。要員の訓練などの準備が必要で、派遣までに3カ月が必要だという。

 イギリスは、既に主力戦車「チャレンジャー2」14両をウクライナに供与することを決めている。また、バイデン大統領は、米主力戦車「M1エイブラムス」31両の供与を25日に表明した。この戦車も配備には数カ月が必要であり、そのうえディーゼル燃料のレオパルト2と違い、ジェット燃料が必要なガスタービンエンジンのため、ウクライナでの運用には困難が伴うと言われている。