これは研究不正なの?
研究不正はたいへん重大な問題です。研究不正をしたと判定された研究者は、最悪の場合、職を失い、学位を取り消され、将来研究職につけなくなります。
では今回の記録の書き換えは、研究不正に当たるでしょうか。
実験記録の書き換えは、もちろん倫理的に好ましくない行為で、一般には改ざんと見做されるでしょうが、これが「研究不正」の定義に当てはまるかどうかは、単純ではありません。実験記録は学術論文や学会発表などと違い、一般に向けて発表するものではないからです。
JAXAと文科省の見解は、実験記録の「改ざん」は研究成果の発表ではなく、研究不正にはあたらない、というものです。
(ちなみに記者会見では、科研費の成果報告書は研究成果の発表ではないという興味深い解釈が述べられました。今後成果報告書を書く際の参考になるかもしれません。)
しかし実験記録そのものの改ざんは研究不正でないという見解を受け入れたとしても、論文や学会発表にそのデータが用いられていたら、それは研究不正にあたります。
では、全5回の閉鎖環境試験のデータを用いた論文や学会発表があったかというと、JAXAの見解では存在しないということです。(私はいくつか気になる論文やプレスリリースを見かけたのですが、これについては後で調べてみます。)