今回、頼主席誕生を受けて、頼主席を知る日本の外交関係者にも話を聞いた。

「2019年5月に頼氏が来日し、ある日本の大物政治家と面会した際、『お疲れの様子ですね、自分は医者だから』と言って、いきなりマッサージを始めた。そうかと思えば、昨年7月、安倍元総理の弔問のため訪日した際には、日本側の窓口に、『即日ビザを出すように』と強引に迫った。

 日本の政治家で兄貴のように慕っているのが、古屋圭司日華議員懇談会会長だ。『古屋さんこそ日本の総理にふさわしい』と語っている」

「頼清徳は『台湾のゼレンスキー』」

 私は、昨年11月26日の台湾統一地方選挙の際にも現地で取材したが、民進党は22地域の首長選挙で、南部の5地域でしか勝てなかった。その大敗の責任を取って、蔡英文主席が辞任したが、台北の民進党幹部はこう語った。

「蔡総統としては、一番信頼を置く陳建仁前副総統を、自分の後継者にしたい。だが力及ばず、頼清徳副総統が出てくるのは確実だ。そんな微妙な党内の雰囲気は、民進党関係者なら誰しも察しているから、次期総統選の準備に、いまひとつ力が入らない」

蔡英文総統が自身の後継者に希望しているとされる陳建仁・前副総統(写真:松尾/アフロスポーツ)

 対する野党・国民党は、先の統一地方選挙で、22地域中、14地域を制した。首都・台北市長選も、蒋介石(しょう・かいせき)元総統の曾孫・蒋萬安(しょう・まんあん)候補を擁立し、圧勝した。国民党関係者は、私にこう述べた。

「頼清徳は、『台湾のゼレンスキー』だ。台湾独立派の頼清徳が総統になったら、習近平政権は絶対に黙っていない。われわれは2024年1月の次期総統選挙で、『台湾が「アジアのウクライナ」になってもよいのか?』と、有権者に問いかけるつもりだ」

 国民党の総統選の有力候補は、朱立倫(しゅ・りつりん)主席と、侯友宜(こう・ゆうぎ)新北市長の二人だ。もしもいま人気絶頂の侯友宜市長が公認候補に選ばれれば、政権交代の可能性は高まるだろう。そうなれば、日本の台湾戦略も一変することになる。