「主席選挙の得票率が99%を超えたと言っても、そもそも立候補者は頼副総統一人だけだった。しかも投票権を持った党員は23万8664人もいたのに、実際に投票したのは、4万1840人に過ぎない。投票率はたったの17.59%だ。

 これほど投票率が低いのは、われわれ民進党員が、頼新主席に対して冷めた目で見ているからだ。頼氏は4年前、蔡英文総統が一番苦しかった時に、蔡総統に砂をかけるように裏切って、私利私欲に走った。私を含めて多くの民進党員が、あの時のことをいまだに忘れていない」

窮地の蔡英文総統を見限った過去

 頼清徳新主席は、1959年10月に台北市郊外で生まれた。父親は鉱山労働者だったが、頼氏が2歳の時、鉱山事故で落命。母親が工場で働きながら6人の子を育てた。秀才の誉れ高かった頼氏は、台湾大学医学部に入学。卒業後、米ハーバード大学に留学し、公共衛生学の修士号を取得した。

 帰国後は、台南市で医者を務めながら、1996年に国民大会代表となった。2010年に台南市長に就任。2014年に再選されたが、2017年9月、蔡英文総統に請われて、行政院長に就任した。

 ところが、翌2018年11月の統一地方選挙で、民進党は大敗。蔡英文総統は党主席を引責辞任した。

 この時、支持率が約15%まで落ち込んだ蔡英文総統は、再起を図ろうとしたが、最側近の一人だった頼清徳行政院長は、「蔡英文時代はもう終わった」として辞表を叩きつけた。そして自ら次期総統候補に出馬表明したのだった。