(舛添 要一:国際政治学者)
2022年の世界を振り返ると、最大の出来事はウクライナ戦争である。それは、従来の価値観を根底から覆し、歴史の転換点となってしまった。
第二次世界大戦の終結と二大陣営の対立
私は、ヨーロッパを専門とする学者として、ロシアとの相互依存関係が平和をもたらすという主張を展開してきたが、その立論を打ち砕くようなプーチン大統領の暴挙に遭った。
現代の世界では、いずれの国も自給自足の経済運営をすることは不可能である。数多くの国と貿易をすることによって、国民のニーズを満たし、生活水準を向上させていくのである。
第二次世界大戦に至る経緯を見ると、政治的意見の相違がブロック経済化をもたらし、それが更なる対立を生むという悪循環を生んだ。自由で開かれた国際経済体制こそ平和と繁栄の道であることを悟った人類は、戦後IMFとGATTという枠組みを作った。
戦後の世界はアメリカが主導する資本主義圏とソ連が君臨する共産主義陣営に分かれ、冷戦という対立構図ができた。アメリカは、1947年6月、マーシャルプランによって欧州の復興を図り、それに反発するソ連は、1949年1月にコメコンを組織して対抗する。
それから40年間、二つの陣営の対立と競争が繰り広げられたが、最終的には西側陣営の勝利に終わった。自由な競争を基本とする資本主義が、計画経済を推進する共産主義に勝ったのであり、それがベルリンの壁の崩壊、ソ連邦の解体に帰結したのである。
ゴルバチョフはペレストロイカ(建て直し)、グラスノスチ(情報公開)をうたい、その後のエリツィン時代には、ロシアも西側陣営に入り、二つのブロックの対立という図式は消えてなくなるような幻想すら生まれたのである。1998年にはG7にロシアが正式に参加しG8となったくらいである。しかし、ロシアは、2014年にクリミア半島に侵攻したために参加資格が奪われ、G7に戻ってしまった。