12月21日、ホワイトハウスでバイデン大統領と会談したウクライナのゼレンスキー大統領(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ウクライナ戦争でウクライナの反転攻勢が強まる中、ロシアは発電所などのインフラを攻撃してウクライナ人の生活を困難にしている。冬将軍の利用である。

 停戦の見通しが立たないまま、ゼレンスキー大統領は、21日アメリカを訪れ、バイデン大統領と会談し、議会でも演説した。2月24日のロシアによる侵略以来、ゼレンスキーが国外に出るのは初めてである。

 今回の訪米の背景、その効果などについて検討してみる。

アメリカの武器支援が命綱

 10カ月前、ロシアは、数日以内に首都キーウを陥落させ、ゼレンスキー政権を崩壊させ、傀儡政権を作るつもりで侵攻を開始した。しかし、その目論見は見事に外れた。

 2014年のクリミア併合以来、アメリカはウクライナ軍の装備の近代化と兵員の訓練に多額の金を注ぎ込んできた。その成果があがって、ウクライナ軍はロシア軍に果敢に抵抗した。何よりも効果的だったのは、アメリカをはじめとするNATO諸国による武器支援であった。

 携行式地対空ミサイル「スティンガー」、対戦車ミサイル「ジャベリン」、ヘリコプター「Mi17」、155ミリ榴弾砲、高機動ロケット砲システム「ハイマース」、自爆型ドローン「スイッチブレード」や「フェニックスゴート」、対ドローンシステム「バンパイア」、中距離地対空ミサイル「NASAMS」などである。

 これらの最新鋭兵器は、ロシア軍を無力化することに絶大な効果を上げており、ロシア軍は後退を余儀なくされている。これらの武器供与がなければ、ウクライナは継戦できないということである。

 しかしながら、NATO諸国とて永久に武器支援を続けられるわけではなく、戦争による諸物価の高騰は欧米諸国の庶民の不満を高めている。イタリアやスウェーデンなどで、極右が勢力を拡大しているのは、その不満の端的な表れである。これが「ウクライナ疲れ」である。