中国、3隻目の空母「福建」の進水式(写真:新華社/アフロ)

世界最強を誇る米海軍の原子力空母に肉薄?

 2022年6月、中国が3隻目の航空母艦(空母)となる「福建」の進水式を盛大に行った。同国海軍での実戦配備は2024年以降になると見られるが、鳴り物入りの中国最新鋭の巨艦に日米豪は早くも警戒レベルを数段高めている様子だ。

 特に日本の場合、12月に岸田政権が閣議決定した「反撃能力」には、当然「福建」を牽制する狙いも込められていると見るのが普通だろう。

 反撃能力の肝は、米製「トマホーク」巡航ミサイルや国産の「12式地対艦誘導弾」の改良型など射程1000km超の「スタンド・オフ(射程外から撃てる)兵器」を自衛隊に“解禁”することにある。だが、北朝鮮、ロシア、中国の“強権国家三兄弟”の長距離ミサイルによる脅威に対抗するのはあくまでも表向きの狙いで、実は「『福建』の遊弋(ゆうよく。軍艦が活発に動き回ること)を牽制し、中国側に強力なメッセージを送っている」との憶測もある。

米海軍のオリバー・ハザード・ペリー級駆逐艦から発射されたトマホーク(写真:米海軍)

「万が一日本や同盟国のアメリカ(あるいは準同盟国の豪州)が中国の攻撃を受けたら、躊躇なく『福建』を沈めるぞ」との“警告”で、「日本の領土から1000km以内は対艦ミサイルの射程内だ」と中国側が認識し日本近海での派手な行動を控えるという心理的効果も期待しているはずだ。

 中国はすでに「遼寧(りょうねい)」「山東(さんとう)」という2隻の空母を配備するが、これらと「福建」とでは戦力に雲泥の差があり、「福建」は世界最強を誇る米海軍の原子力空母に肉薄するのでは? と評する専門家もいる。

中国空母「山東」(写真:アフロ)

 特筆すべきは本艦が「中国が設計から建造まで行った初のオリジナル空母」という点で、前2隻は旧ソ連の中古品の“化粧直し”とそのコピーにすぎない。「外観は米空母そっくり」との酷評もあるが、中国は超大型空母も独自建造できるほど軍事技術をアップさせた、とも言えるだろう。

 巨体ぶりも注目で、満載排水量8万~9万トン、全長300~320mに達する中国最大の軍艦だ。米海軍が有する11隻の超巨大原子力空母の中でも2017年に就役した最新鋭の「ジェラルド・R・フォード」(満載排水量10万トン超、全長337m)と比べても遜色なく、もちろんに同7万トンクラスの「遼寧」「山東」よりふた回りほど大きい。

 基本的に空母は大きいほど有利で、多くの航空機を搭載し長期間の洋上作戦もこなせる。また、万が一ミサイル攻撃に見舞われてもなかなか沈まない。しかし、ランニングコストは目が飛び出るほど高く、数千人に上る乗組員の確保や訓練も大変だ。