最大の注目「電磁カタパルト」装備の真偽
「福建」が「遼寧」「山東」の2空母と性能的に決定的に違う点は、1にも2にも「福建」が米空母と同じ「CATOBAR」(キャトーバー)型だということで、「カタパルト発艦・拘束装置(アレスティング・ギア)着艦」を意味する。
「カタパルト」とは飛行甲板に装備する「パチンコのゴム」のようなもので、爆弾を満載して重くなった戦闘攻撃機を短い飛行甲板から勢いよく大空に“弾き飛ばす”役目を担う。
一方「アレスティング・ギア」はこの逆で、飛行甲板に何本も鋼鉄製ワイヤーを張り、猛スピードで着艦する戦闘攻撃機を引っかけて強引に制止させる装置だ。
ちなみに現在カタパルトを持つ空母を建造して実戦配備するのは米仏の2カ国だけで、世界に空母は数あるものの大半はこれを持たない。ほとんどは飛行甲板前方を反り上げて自力発進する戦闘攻撃機の離陸を助ける「スキージャンプ」と呼ばれる構造物を設けており、「遼寧」「山東」も例外でない。ただし発進する戦闘攻撃機の重量に制限がかかり、あまり爆弾やミサイルが積めない。
また、見た目は普通の戦闘攻撃機ながらヘリコプターのように真上に上昇できる「垂直離着陸機(「V/STOL」機または「STOVL機」)もあるが、現在米製の最新鋭ステルス機「F-35B」が事実上唯一のSTOVL戦闘攻撃機である。もちろん中国に供与するわけがなく、また中国も独自開発に挑むものの成功には程遠いため、この機体の選択肢はない。
「空母はみなカタパルトをつければいいのでは」と思うかもしれないが、事実上アメリカによる「門外不出」の技術でフランスには同盟国のよしみで供与しているという内情がある。
カタパルトは蒸気式がこれまでの常識だったが、リニアモーターの技術を使った高性能の次世代型「電磁カタパルト」(EMALS)をアメリカが世界で初めて「ジェラルド・R・フォード」に搭載、実用化させた。

一方、中国は蒸気式カタパルトを飛び越え、独自開発のEMALSをいきなり「福建」に載せたと豪語する。事実なら軍事技術の驚くべき飛躍で「アメリカからスパイしたのでは」との指摘もある。本家・アメリカですらEMALSに悪戦苦闘し、今でも「ジェラルド・R・フォード」は満足いく性能を発揮できない状況であるというのに、これまで全くの素人だった中国がいきなりEMALSを戦力化できるのだろうか。
実際「福建」の進水式の公開画像ではEMALSの部分を不自然に覆い隠している点も腑に落ちず、さらにはこれまで中国がこの技術を使って発進訓練したという映像が公開された例も皆無であり、「単なるハッタリでは」との声も少なくない。