海中から発射されたトマホークミサイル(写真:Raytheon社)

(北村 淳:軍事社会学者)

 日本政府が防衛予算を大幅に拡大させるのに伴い、以前より本コラムでも危惧していたとおりアメリカからの武器弾薬調達費が爆発的に膨張しそうである。

 2023年度防衛予算案はおよそ6兆8219億円と今年度(2022年度)当初予算のおよそ1.26倍である。それに対して米国からの武器輸入(注)予定額はおよそ1兆4768億円であり、昨年の3797億円の3.9倍に上る。

 また国防予算に占める米国からの兵器システム購入予定費がおよそ22%も占めている。これではどこの国の国防費かわからない。あるいは明治期のように、近代海軍を誕生させたばかりで、自ら軍艦どころか鉄鋼すらまともに大量に生み出すことができなかった時代に逆戻りしたかのような状態である。

(注)より正確には、米政府が米連邦議会の承認を得て米国製武器弾薬を有償で援助する武器弾薬供与制度(FMS)に基づいた形の購入である。FMSでは米国軍需企業が利益を得るだけでなく米国政府も手数料収入を確保できる。もし、供与先の国が購入資金に困っている場合には、FMSを担当している国防総省内の機関が資金融資も行う制度がある。つまり、米国が売りたい兵器は金を貸し付けてでも売却し、売りたくない兵器は、政府や議会の拒否手続きにより売却しない、という国家兵器弾薬売り込みシステムを米国防総省は担っている。