(舛添 要一:国際政治学者)
2023年、元日にもウクライナでは戦闘が続く暗い幕開けとなった。今年の課題は先ずはウクライナ戦争である。
そして、新型コロナウイルス流行の行方も世界経済に大きな影響を及ぼす。ところが、習近平政権がゼロコロナ政策を転換した途端に、中国で感染が拡大しており、それが新たな変異株を生み出す危険性を増している。
多難な年の初めである。
戦闘が続くウクライナ
元日に、ドネツク州の州都に近いマキイウカで、ロシア軍の部隊兵舎が、ウクライナ軍の米国製高機動ロケット砲ハイマースに攻撃され、多数の兵士が死傷した。ロシア国防省の発表だと死者は89人だということだが、実際はもっと多いのではないかと言われている。
犠牲者には動員された兵士も多数含まれているが、このようにロシア兵の死傷者が増えれば、国内での反戦運動が拡大する可能性がある。1979年12月にソ連軍はアフガニスタンに侵攻した。大きな犠牲を伴いながら成果を上げることができず、10年後の1989年2月には撤退した。
撤退への大きな圧力となったのは、息子の命を戦場で奪われたロシアの母たちの声であった。今回もそのような声が高まって大きな政治的力を持つようになるのには、どれくらいの犠牲者と時間が必要なのであろうか。
ソ連軍の死者1万5000人、負傷者5万人と言われるアフガニスタン介入は、ソ連邦崩壊への序曲となった。今回のウクライナでは、ロシア兵の死傷者の数は、すでにそれを大幅に超えているようである。
1月5日、プーチン大統領はロシア正教のクリスマスに当たる6日の正午から36時間の停戦を命じた。キリル総主教のクリスマス停戦の呼びかけに応じた措置だが、ウクライナ側は、この停戦提案を偽善として拒否している。