1 月 11 日、ドネツク州バフムート近郊の最前線で写真に収まるウクライナ軍の兵士(写真:AP/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ウクライナでは、東部のドネツク州で激しい戦闘が繰り広げられている。ロシアが、民間の軍事組織ワグネルを使って、ウクライナ側の拠点バフムトの掌握をねらって攻勢をかけ、近郊の町ソレダールを掌握したと主張している。

 ロシアのショイグ国防相は、ゲラシモフ参謀総長をウクライナ軍事侵攻の総司令官に任命した。参謀総長が総司令官というのは極めて異例のことである。国防省は「遂行すべき任務の範囲が拡大したことに対応し、部隊間の緊密な協力を進めるため」としているが、ロシア軍の作戦が上手く行っていないことの表れだという意見も西側にはある。

 また、航空機関連の調達が遅れていることについて、プーチン大統領がマントゥロフ副首相兼産業貿易相を叱責し、迅速に対処するように指示したことをロシアのメディアが伝えている。

 欧米から供与された最新鋭兵器を使って反撃するウクライナ軍の前に、ロシア軍は劣勢に立たされている。今後、東部での戦闘がどのような展開を見せるかを注視したいが、停戦への可能性を見出すのは困難である。

朝鮮半島型の休戦シナリオとは

 戦線が膠着する中で、ウクライナのメディアが8日に伝えたところによると、ウクライナのダニロフ国家安全保障・国防会議書記は、ロシアが朝鮮戦争の「休戦」協定のようなものを提案してくる可能性があると述べたという。

 ダニロフは、「ロシア人は今、何でも思い付くだろう。提案してくる可能性があるシナリオの一つが『38度線』であることは、確実に分かる。最近、韓国人と話したのだが、彼らは譲歩したのは間違いだったと考えている。今も(北朝鮮)問題を抱えている」と発言している。

 要するにこれは、東部のドネツク、ルガンスク、南部のヘルソン、ザポリージャの計4州については、プーチンはロシア領と宣言しており、ウクライナを分割して、残りの領土をウクライナ領とする分割案にならざるを得ないだろう。もちろん2014年に併合したクリミアはロシア領のままである。

 これは、朝鮮半島が38度線で分断されて、北朝鮮と韓国という二つの国家が対峙している状況を念頭に置いている。