「以心伝心」とは、もとは文字や言葉で表せない奥深い仏教の神髄を、無言のうちに師から弟子に「心を以て心に伝う」に由来する仏教用語。(画:神田宗庭隆信「当麻曼荼羅図」東京国立博物館蔵)

 意識を観念という見方で把捉したならば、最初の存在が意識で、私たちは世界を自らの意識を通して認識している。

 それは目や耳など感覚器官が、色や声など、それぞれ別々に認識するのに対し、意識は対象を概観して判断して、結論づける。

 古代ギリシアの哲学者・プラトン(紀元前427-紀元前347)は「肉体は魂(意識)の牢獄である」と、人間の魂は肉体という牢獄に繋がれた囚人のようなものである、と言った。そして、

「肉体は自身そのものだが、本質の自分とは肉体ではなく魂(意識)である」

「私たちの思惟が最も働くのは、魂が聴覚、視覚、苦痛、快楽といった肉体的なものに煩わされず、真実を追及する時である」

「魂は不死なるものであり、肉体は意識が棲む館で、生きることこそ不完全なるもの」

「死とは、魂の肉体からの離脱、魂を肉体から解放しようとするものだ」

「死に臨んで嘆く者がいたら、その者は知を愛する者ではなく、肉体を愛する者ということになる」

「亡くなれば自由で解き放たれた自身に戻る」

 と、肉体と意識についてプラトンは示している。

ヒトが感じ取れない感覚

 感覚器官とは受容器として働く身体に備わる器官で、物理的な刺激を受け取れば、末梢神経系からニューロンを介して中枢神経系へと伝わり、刺激の種類に応じて、対応する感覚器や生じる感覚が分けられる。

 ヒトの場合、感覚器官は「目」「耳」「鼻」「舌」「皮膚」の5つに分類される。

 光を感じ取る視覚器である「目(眼球)」は、眼球が受ける可視光の量と波長、時間的変化といった情報を視神経に伝える。

 音を聞くための聴覚器「耳」は、空間の波長である空気振動・音波を感知し、波長と変化のパターンを内耳神経・蝸牛神経に伝える。

 臭いを嗅ぐための嗅覚器「鼻」は、鼻の奥に鼻粘膜嗅部があり、鼻に吸い込まれた空気中を漂う臭い物質を感知。鼻腔は咽頭とつながっているために、口腔から嚥下した物質も感知し嗅神経に伝える。

 味を感じるための器官「舌」は、舌表面に存在する味蕾(みらい)は、舌神経を介して、顔面神経、舌咽神経に伝える。

 温度や刺激に対する触覚器の「皮膚」は、感覚神経が接続され、触覚、圧覚、痛覚、温度覚などが存在する。

 感覚器官の情報伝達は、電気活動で神経細胞間を通って脳に伝えられ、意識は脳の中で生じると考えられている。

「見る」「聞く」「味わう」「嗅ぐ」「感じる」といった知覚は脳の働きによるもので、脳が働けば、そこは電気が流れる。