人類が文字を使用したと確認される最古のものはメソポタミアで、5500年前にシュメール人による楔形文字や、ナイル川流域の古代エジプト人による5000年前象形文字がある。
4600年前インダス文明が栄えたハラッパーやモヘンジョダロなどの中心都市で使われた象形文字インダス印章文字もあるが、それらは現在使われてはいない。
しかし、漢字は3500年前から中国で使用され続け、現代でも中国、日本で使われている。
最古の部首別漢字字典である『説文解字(せつもんがいじ)』は漢字を540の部首に分けて体系付け、その成り立ちを解説し、字の本義を記したもので1世紀中国で編纂されたものである。
それには「气」とは雲の漂う様をあらわしているとあり、気が漂い立ちこめる様子をあらわしている。
気とは、もともと思想や道教、中医学の用語である。
気は眼で診ることができず、流動的で運動し、不思議な作用を起こす。
気運、人気、気配、生気、勇気、大気、気象、蒸気、電気・・・ちまたには気という言葉があふれている。
古代人は、万物はすべて「気」そのものであり、天や地の気など目に見えないものから物理的な形状となって現れるものも「気」と捉えていた。
風や雲、雨といった気象を生じさせるのを外気というが、天や地の気も人の気もすべて異なるものではない。
『荘子』外篇では「天下を通じて一気のみ」と同一のものだと考えられていたのである。
雲は大気の凝結であり、風は大気の流動。
一方、人間は息をすることで生きている実感が湧く。そのため、大気を吸い込み身体内に充満させ、循環させることで人間の身体を内側から満たし、賦活する生命力としての勢力や元気を与えている。
もしくは人間を活かしているものが気息であるという考えが生まれる。
それは小宇宙である人の身体の呼吸と自然気象である大気、つまり息は大気とは連続的なものであるから、気象などの自然の流動と関係付けられ、その原理であると考えられた。