ロシアの侵攻が始まってからウクライナの子供たち数百万人が住む場所を追われた

 私たちは学歴を競い、仕事や出世を競い、収入を競い合う。

 その理由は欲するものを得るためである。競争して勝つことを子供時代から刷り込まれ、その先入見は思考や精神に組み込まれ育まれる。

 その根源は生存競争と深いかかわりがある。

 生物が限られた自然環境内で生存し、子孫を残す種間競争では、鳥や蝶は羽の色を、動物なら個体の大きさなど、遺伝的により良い条件を自分が具えていることをアピールすることで雌の気を惹き、種を残すチャンスをうかがう。

 人は自身と他人とを比較してしまいがちだが、自身と他者の優劣を決めたり、何が違うか、その差を比較したりするのは、優位であれば結婚、出世、所得などの人生に影響を及ぼすからだろう。

 しかし、競争すれば、対立が生じることもある。対立は生物にとって非常に深いところに根ざしたものといえる。

 自然界において普段、オオカミは鹿など捕えた獲物を分け合うが、特定の季節、交尾期には、動物たちは種間競争のため攻撃的にもなる。

分断と対立が生じるわけ

 実際、私たちの住む世界には心理的、物理的にも、数多くの矛盾や混乱をはらんでいる。

 時代や場所を問わず、人が生きるということは、途方もなく膨大で複雑な問題と向き合わなければならない。

 身近な生活のところでは真面目に働いても解決しない経済的な問題、社会に蔓延する不正義、理不尽、男女間の葛藤、集団間の対立、社会的差別、政治や宗教による社会の分断。

 分断、対立は争いの火種だが、争いは人類の歴史とともにある。

 旧石器時代の約1万5000 年前、アフリカ・スーダンのヌビア砂漠で、夥しい数の人が武器で殺傷されている。これは確認される歴史上最古の人類の戦争とされる。