先日、県外出張をした。大学主催の講演会にパネリストとして招かれたので参加してきたのだが、基調講演をした駐日外交官や司会者も含めて、登壇した6人中5人が女性だった。
終了後いろんな人から、ステージ上のジェンダーバランスについて驚きや賞賛の声が上がった。「こんなに女性がたくさん登壇するイベントはめずらしい!」「時代は変わった!」などなど。受け止める側の私は、この反応を喜ぶべきなのか、あるいは嘆くべきなのか、よくわからない微妙な感情にさいなまれた。
日本は、なんで「おっさん」ばっかりなんですか?
私がモヤる理由は至ってシンプル。元来、この国の人口は、女性の方が多いはずだからだ。総務省統計局によると、昨年10月1日現在の日本の人口1億2550万人を男女別で見ると、女性の方が346万人も多い。346万人! 「東京ドーム何個分」ではないが、私が暮らす広島市3個分近く。なのに、女性の方が多いはずのこの国では、政界を見ても、経済界を見ても、はたまたアカデミズムの世界を見ても、男性が圧倒的に多い。
私が昨年まで約20年間身を置いた全国紙、つまりマスメディアの世界ももれなく。同期入社の記者のうち女性は確か2割前後だった。どこの業界でも、決定権を握る立場、つまり組織の上の方に行けば行くほど男性比率は高くなる。
聞いた瞬間、イヤな顔をする男性があまりに多いフレーズ「ジェンダーギャップ指数」。2022年の日本の総合スコアは0.650で、前年比ほぼ横ばいの146カ国中116位だ。先進国の中で最低レベルで、韓国や中国、ASEAN諸国よりも順位が低い。世界を見渡すと、日本は圧倒的に男性優位社会が固定化されてしまっているのだ。
一方で、そんな社会はおかしくないか、という指摘がここ数年いろんな形で出てくるようになった。「おっさん(オッサン)」という言葉を冠した本が立て続けに出版され、各界の女性が男性優位の同質社会に対して静かに小石を投げている(ちなみに、おっさん=男性という意味では必ずしもないので、まずは一連の本を読んでいただきたい)。
そうした中、「ジェンダーバランス」というフレーズもしばしば耳にするようになった。シンポジウムなど、有識者と言われる人たちが複数人登壇するイベントにおいて、男女比に対する厳しい視線が注がれるように(やっと)なってきたのだ。「え、なんでおっさんばっかりなんですか?」という。